人生いろいろ

大槌、小槌の島

久し振りに来廊されたTさんご夫妻から、Tさんが生まれる前に出奔しつい先日Tさんを訪ねてみえられた叔父さんのはなしを聞きました。60年ぶりに初めて会う叔父さんを、亡くなった父親の替わりに叔母さんに会わせたり墓参りにお連れしたりまるでテレビドラマの世界だったとTさん。行く末を案じておられたであろうTさんの叔父さんは優しい甥夫婦が地元にいて心安らかに彼の地へ帰られたことでしょう。
似たような話が店主の身近でもありました。新聞を賑わしている事件の被害者の方がギャラリーかわにしで扱っている作家さんの次男さんでした。HPから検索し千葉県の警察や関東圏の民放、新聞社と問い合わせがありTさんと同じように晴天の霹靂でした。若いころから家を出て行方不明だとはきいていたのですがこういうかたちで消息を知るのは本当に辛いですね。

ホームドラマにでてくるような家庭で育った店主の同級生Mちゃんも故郷と家族を断ち切って出て行きました。Mちゃんの父親は日曜画家でよく個展をされていたのを知っていた店主はギャラリーかわにしの2F(その当時は2Fを貸し会場にしていた)で作品展をしませんかとお誘いしました。すこしでも前向きに元気で過ごして欲しいと思ったからです。Mちゃんのお父さんは毎日松山からバスに乗って1週間ギャラリーかわにしへ通ってくれ、朝一番にお出ししたコーヒーも美味しいと笑顔で飲んでくれました。その数年後、Mちゃんのお父さんの欠礼状が届きました。さらに数年後、次男さんのお嫁さんの運転でMちゃんのお母さんが見えられました。どうしてもお会いしてもう一度お礼が言いたかったと、Mちゃんのお父さんはあの時の1週間を本当に嬉しかったとよく話題にされたとのこと、私は優しい次男一家と穏やかに過ごしているけどMは父親の死を知らないと思います、何処でどうしているのか…ハンカチを目に押し当てて静かに泣かれるMちゃんのお母さんを前に店主は言葉がありませんでした。

画像をアップして見てください。左におにぎりのような形の二つの島は大槌、小槌。宇高連絡船を利用した四国の者には馴染みの島です。