昭和18年、戦況が激しくなり油彩画を描くための材料が不足し、水彩画中心の制作になる中で独自の技法を発見する。
このくだりを長くなるが彼の文を引用する。
「一つ水彩にて、油彩画同様の効果を得んものと決心し、建築用塗料の胡粉、黄土、ベンガラ、花群青、洋藍といったものを選び、是を膠液で溶くこととした(中略)また或る時思い切って全面的に、削りを入れて見た。而したら以外な画面に逢遇した。版画の様な得たいの知れぬ、不思議なものが出来上がった。是に興味をもって、その後は盛んに全面的な削りに没頭した。(中略)而して悟ったことは、高く盛り上げることと、深く削ることは、結果に於いて同じである。(中略)而して刀で描く絵を会得し、これを自ら刀画と銘名して見た。」
たまたま発見した紙への彫刻。それからは刀画に魅入られ憑かれたように毎日制作する姿勢は恐ろしいほどだったという。紙を削るという作業から紙質にこだわりあらゆる紙を試し、四国の紙製造業者にわざわざ漉いてもらったりもしている。
安藤義茂 刀画の発見
美派・この逸品 2008-10-28